そろそろかな、と思っている頃に予想通り着メロが鳴る。


『むり!大石ヘルプ!』

短文ながらに英二の焦りが手に取るようにわかる。
いつもながら甘いなぁ、なんて苦笑いながらリダイアルのボタンを押した。

ワンコールで繋がって、「もしもし」も「俺だけど、」も言わずに本題に入る。

「何が残ってるんだ?」

『も、ムリだってほんとほんと!数学と英語!絶対終わんないってコレ人間がやる量じゃないよ!』

「読書感想文は頑張ったんだ?」

『ん、ガンバった!』

「えらいえらい」

『ほめてほめて〜』

「よく出来ました」


英二を机に向かわせたかったら、まずはテンションを上げないと。
数学は7月の終わりくらいから少し見ておいたし、それ以降分からなければ飛ばして進めた方が、っていってあるから、3割4割は終わってる筈だ。
昨日今日はたまにメールも来ていたし。
1箇所分からなくなって詰まると、そこで立ち止まって嫌になってしまうから効率が悪かったんだ。
一旦乗ってしまえばテンションが上がっている間はサクサク進むから、あと1時間も頑張れば終わる筈。
それまでは、付き合うとしましょう。
今日は1日部活で俺以上に疲れてるだろうし。


「数学、どこが分かんないの?」

『えっ、と……、こないだ飛ばしちゃえって言われたから、とりあえずAは大体がんばった』

「頑張りました」

『か、ら、B問題が残ってる。あ、あと英語の和訳!1ページ分やるやつ』

「英語は、確か英二のクラスは授業で大体やり終わってると思うよ。先生が6組だけ進んでるって言ってたから。ノートに残ってるんじゃないか?あの先生の和訳はプリント配られるだろ」

『まじ?!ありがとっ!』

「数学は、B問題は量ないから多分すぐ終わると思うし、明日の朝見てやるよ」

『サンキュ愛してる!』

「で、Aのどの辺り?」

『んとねー、』


さてと、家の電話に切り替えるべきかな。





8月21日の日記より。

たしかちょうどこの時不動の〜を書いてて、電話させたかった気がします。

英二は不二にも泣きつきます多分。
お母さんの対応を忘れない男、大石秀一郎。