次の日。
というか、その日。

登校したら、まず隆さんがおめでとうを言ってくれて、お父さん手書きのサービス券をくれた。一緒に来た不二は、リボンのついた小さなサボテンを渡してくれた。
不二に聞くと、英二はまだ来ていないらしい。


午後になって部室に入ろうとすると、破裂音といっしょに視界が鮮やかになった。

赤、黄色、青、紫、白。

その色とりどりは紙の吹雪。

「大石副部長、誕生日おめでとーございます!」

両脇に海堂と越前を抱えた桃が、満面の笑みで祝いの言葉をくれる。
両隣の2人は、少し赤くなって、腕を外そうともがきながら、小さな声でおめでとうございます、と呟いてくれた。

あ、海堂が脱出成功した。
「…じゃあ、失礼します」
ぺこ、と軽く会釈して練習に出ようとしたバンダナ頭に、白くて大きな手が乗っかった。

「まだだろ?」

何がだろう。

「いや、俺は、」
「逃げるの?」


因みに、越前は未だに桃の拘束から逃れられてはいない。

体格差がありすぎるんだろう。



++++



ハッピーバースデイの歌がこんなに珍しい光景になるとは思わなかった。

桃が言うには、「桃城武プレゼンツ!青学テニス部合唱企画〜!」だ、そうだ。

1年生たちは可愛かったし、何より海堂、越前が歌うのを見れるのはもう一生に何度もないだろうな。乾は自分は歌わないで、楽しそうにノートに何事か書き込んでいた。


部室にはもう手塚もいて、手塚と乾からもおめでとうを貰った。


びっくりして、ひとまずありがとうだけ伝えて、何だか少し照れくさくて。

そんな感じで入り口近くで立ったままの俺に、不二が

「まだ部活始まるまで時間あるでしょ。1年たちへの指示は僕らでやっておくから」

囁いた。


急にどうしたんだろうか。

よくわからない風な俺に、因みに頭の固い鬼部長はうまく言いくるめてあるから、と付け加える。

結局俺が事態を飲み込めないうちに、青学の天才は手塚やら隆さんの背中を押して、じゃあお先に、と出ていってしまった。

越前は桃に、海堂は乾に引きずられて、1年生やらレギュラー以外の部員も、それぞれ追いたてられて出ていった。



俺、ひとり取り残された?


とか悶々と考えながらも、着替えなければと奥に入ると。



人がいた。

言い換えるなら、


英二が寝ていた。


カバンを抱えて。
床に座り込んで。


さほど広くもないこの部室の中で今まで気がつかなかったのは、膝を抱えてしゃがみこんでいるから。
物陰に隠れてしまっていたのだろう。


時々かくんと揺れるそのあどけない寝顔を眺めていると、ふと、今日いちばんの声が蘇る。


『プレゼントは明日な!』


プレゼントなんて、



「……はやく寝ろって言ったじゃないか」



ふわふわと揺れる髪はやわらかくて。
触れた頬はあたたかい。

寝不足で眠り込む、うつむいた顔も愛おしくて。




――――プレゼントなんて、なくっても、







君さえいれば、それがいちばん。








自分は英二視点の話が書けないんですかね……?
そして英二の出番がほとんどない、というびっくり現象。

我が家のタカさんと不二の仲の良さがぱねぇです。期せずして。
乾も薫ちゃんだいすきです(笑)