「見て見てすっげーっしょ!」

普段よりも大分早く、しかもしっかりと目の覚めた声と表情の芥川さんが、小走りで部室へと入ってくる。

「足でドアを開けない。行儀悪いですよ」
「えー。見てよ見てよすっげーっしょ?」

へにゃへにゃと笑って、両手が塞がるほどいっぱいに抱え込んだ小さな箱をソファに広げはじめた。
白、赤、ピンク。
黄色と白、赤と白のグラデーション。
オレンジがメインの鮮やかな暖色。
クッションいくつ分の面積を占めているんだと問いただしたくなる、その箱の山の中で一番多いのは、赤。
次が白。


べりべりと音を立てて片っ端から箱を開け、中の小袋を空にしていく。
空箱の山がどんどん大きくなっていく。


ああ、幸せそうだ。


ふにゃふにゃしたその笑顔を見ていたら、何故か肺のあたりがムカムカしてきた。
理由はわからない。
わからないから、余計に苛立ちが募る。


朝早くから騒がしい2人組に拉致られた俺はなんなんだ。


「あ」


自分の手から、黄色の頭に白と茶の箱が飛んだ。





(ってえ!!)
(すみませ、)
(おわ! これくれんの? くれんの? 日吉! 知ってたの?)
(………朝っぱらから伊達眼鏡と派手な髪の先輩に拉致されたんですよ。コンビニに)




11月11日、ポッキー&プリッツの日の日記から。

日吉もポッキー買(わされ)ったんだよ!
ええわたしもです。