The ice is cool , cold and cool.
So I'm dislike by every.




(何でそんな冷たくいられんだよ)
(ありえない位冷めてる)
(信じらんねえ)
(鳳と足して2で割っても足りないっつの)


あの人の後だ。何をしようが比べられるのはわかっている。
上等じゃねえか。
実力至上主義の制度は一切変えていない。
文句があるなら実力で挑んで来い。


(「氷の帝国」の大将には丁度いいんじゃねえの?)


ああ、その通りだよ。
冷たくて固くて冷えきっていて、周りと距離を置かれる氷。
冷めた性分冷たい性格。
ぴったりじゃないか。
なあお前ら。
上等だ。






( 氷の色 )






日吉はかっこいい。
かわいいくせにかっこいい。
なんかズルいと思う。反則だ。

宍戸とか向日とか丸井くんとかもかっこいいと思うけど、どっか違う感じ。

なんて言うんだろ、うまく言えねえけど、こう、燃えるぜー!って感じ?
あ、熱い感じ。
漫画の主人公みたいな。

おれが知ってた「かっこいい」は、大体みんなそんな感じだと思う。


けど、日吉の「かっこいい」はぴん、てしてる。
多分、こういうのを「凛としてる」って言うんだろうなあって思う。


「日吉ー」

「なんですか」

「おめえかっこいいなー」

「……はあ?なんですか急に」


また脈絡のない、とか呟きながら広げたノートに視線を戻す。
もう外は暗い。
まだそんな遅くないのに。
もう部室にはおれと日吉しかいない。
部活の時間終わってるし。
あとちょっとで最終の下校時刻。
いつも日吉は時間すれすれまでひとりで何か書いてる。
それだけは絶対オートリにも樺ちゃんにも誰にも任せない。

前に家でやればいいじゃん、って言ってみたら、忘れるかもしれませんから、って当然ってカオで返された。

日吉は今「日吉部長」だから。
上を見ながら下を見るようになった。
上ばっかり見てた目が下も見るようになった。

けど、かっこよさは変わんねえの。



日吉が部長になってから、前よりもいっぱいの部員と関わるようになって、なんて言われてんのかは知ってる。
それが悪口の陰口だってのも知ってる。
そんで日吉もそれを知ってる。

でもさ、「氷」って悪ぃモン?

日吉を氷に例えんの、そんな間違っちゃないと思う。

透明できらきらしててキレイだ。
表面だけちょっと溶けるともっと光を映してきらきらする。
溶けきっちゃうとだめだ。なんかムナシクなるから。
凍りすぎてるとざらざらして、むこうが見えない。白い。

だから溶けかけの氷ってのがいちばんキレイなんじゃねえかなって思う。

日吉の「かっこいい」はぴーんてしてる。
冷たいけど、キライじゃない。
冬に電車から降りた時みたいな感じかなあ。
気持ちいい感じ。
ほてった時に顔洗うみたいな。そんな感じ。



おれがなんか言って、日吉が一瞬顔をあげた。
「涼しげな目元」ってこんなんのことなんだろうなー。
またペンを動かしに戻る。


「もう少しで終わりますから」

「ゆっくりでいいよー」

「説教食らいますよ。今週の見回り、3年の主任ですから」

「マジ?うっわー。じゃあバレたら逃避行しような」

「丁重にお断りしますよ。アンタと逃避行じゃ身の安全が保証されないでしょう」

「ひでえ!」


どこに対してかはわかんないけど、おれのコトバのどっかに反応して視線だけ送ってくる。

そのカオがちょこっと優しかったから、おれのテンションはぐいぐいあがる。
おれは部員じゃないから固いカオする必要はないよ。


氷はキレイだ。
ぴっとして凛として涼しげ。
ちょっと濡れると透き通って透明。
でも溶けきっちゃだめだ。
氷がかっこいいのはまっすぐ自分があるからだ。
まっすぐ前を向いて上を向いて、ぐるぐるキタナイものなんかなくて、透明だからだ。
けどやっぱり触って冷たすぎるのはちょっと困るな。
ぎゅーってしづらいし。
いや、やってやるけどね?
涼しげでひんやりするくらいがおれにはちょうどいい。
熱くても全然イイけど。
水にならなければそれもいい。


だから。
おれの前では、
表面も
あったかくなれあったまれ。
キレイな色は変えちゃだめ。
溶けないまんま、芯は熱く!



まっすぐな透明は残したまま、
ちょっとおれの熱をお裾分けされてください。




The ice is cool , beautiful and cool !
So I love him !!








「氷」に対する解釈の違いというか。
同じ「クール」でも冷たいとかっこいい、みたいな。
いつも以上に雰囲気文ですかね…。フィーリングで読んでやってください。

企画「監督、息子さん達を私にください。」さまに提出させていただきました。

091214