日吉がおれんちに泊まりにきた。 まぁ、おれが引っ張って連れてきたんだけど。 いつもは泊まりおいでよー、とか、泊まりにいきたいとか言っても、ソッコーで断られちゃうんだけど。 あ、でもでも、そんときって、ひよちょっとほっぺ赤くなってるんだよ。 すっげーかわいいの! 今日もいつもどーり、何言ってるんですかアンタは、って怒られた。 でも、 でもね? あまいなー、日吉クン! 今日のおれには秘策があるのだよ! 「明日さ、おれ誕生日なんだよねー。ケーキあるんだよー!」 ケーキにつられないやつなんて、跡部くらいしかいないっしょ! 日吉はちょっとびっくりしたみたいな顔で、目がおっきくなった。 やっぱしかわいいなー。 「……誕生日、ですか」 「うん! 因みにこどもの日だからかしわ餅つき!」 やっべ、この組み合わせって跡部でもつられる気がする。 「……。じゃあ、別に、行っても構わない、です、けど」 なんかふしぎなくらいたどたどしい返事だったけど、これで日吉の泊まりが決まった。 ケーキとかしわ餅すげえ。最強だ。 で、今は夜。 ちょっと前に時計みたら11時ちょっと過ぎたくらいだったから今は15分とかかな。 ひよしは正座でふらふらしてる。 手はぎゅ、ってぐーにして握って、ひざの上。 目はもう、次まばたきしたら開かなくなっちまうんじゃないかってくらいにくっつきそう。 結構意外がられるけど、おれはけっこう夜につよい。 っていうか、眠いときにいつでも寝ちゃうから、遊びたいときに起きるってだけなんだけど。 けど日吉いつもはやく寝てはやく起きる。 合宿のときに大騒ぎしてたらすっげーおこられた。他人のアンミンボウガイしないでください! って。 それでも遊んでたおれたち3人は、あ、おれと向日と宍戸な? 3人は、跡部に殴られた。 多分宍戸はかなりとばっちりだったけど。 だから今日は昼間のうちに日吉にべったり出来るだけべったりして、夜はさっさと寝ちまおう! って思ってた。 んだけど。 「ひよしー、ひーよー。ねーもう寝ちゃいなよ、ベッド貸したげるからさー。ね?」 「へいき、で、…す」 なんでかわかんないけど、日吉はすっごく頑張って起きてる。 頑張ってる、ってわかるくらい頑張ってる。 寝なよ、って何回も言ってるんだけどな。 別になんかしてるってわけでもないんだけど、でも起きてて、アタマふらふらしてる。 言ったらまたおこられると思うけど、かわいいと思う。 思うんだけどね? 「ひーよ。眠いときは寝るのがいちばんだよー? 日吉いっつも寝るの早いっしょ? おれも寝るからダイジョブだって」 「べ、つに、ねむくないです」 「うそつけー」 「ほんとです…」 「ぜーってー眠いっしょ。話しかたなんかほわほわしてんもん」 「してないで…」 す ぽてん。 正座のまんま、右にたおれた。 おれはさっきまで、日吉の右側で寝ろ寝ろ言ってた。 だから、 「あー、う、えと、ひよし?」 つまり今のこの状況は、 「ひざまくら?」 左足、立ててなくてよかったぁ……マジでマジで。 「ねちゃった……? の、か」 返事ないし。 目ぇあいてないし。 つか、日吉起きてたらぜってえひざまくらとかムリだもん。 多分いつもよりほっぺまっかにしておこるよ。 そーっと、起こさないように、めがねをはずして、机におく。 「おーさらさらー」 いつもは一瞬しかさわれないから、髪にさわってみた。 あったかくって、さらさら。 おれのとは違くて、さわっても手から落ちていっちゃう感じ。 いつも大人みたいだけど、寝てるカオ見ると、あーやっぱおれよりコドモなんだなーって思う。 1才だけだけどね。 そんな感じで、しばらく髪さわったり、ほっぺたつっついてみたり、グーとパーのまんなかくらいの手の指をいじったりとかしてたら、ひざの上でちょっと丸いアタマが動いた。 「……ん、」 「あーおはよー」 目、こすってて、なんかコドモみたいだ。小っさい。 「お、はよ……?」 「おお、ねぼけてるねぼけてる」 「…ぅ、ん、ぁ」 手の甲でこするのをやめて、目を細くしてこっちをみてる。 「あくたがわせんぱい……?」 「んーどしたのー」 ねぼけてる今のうちに、よしよしってアタマをなでとく。 やっぱあったかい。 「いま、」 「うん」 「いま、なんじですか?」 いきなり聞かれたからなんなんだろーなーとは思ったけど、近くにあった日吉のケータイをかってに開いて教えたげた。 「んと、ぜろじにふん、あ、さんぷん、になった」 「ぇ、あ、そう、ですか……」 すっごいびっくりしたカオして、おこったカオになって、なきそうなカオして、 「たんじょうび、おめでとうございます」 って言った。 おれは実は今自分の誕生日だって忘れてたから、ちょっとびっくりして、日吉が覚えてておめでとって言ってくれたのがうれしかった。 「ありがと!」 でも、うれしいより日吉のなきそうなカオが気になるほうが大っきくって。 「どしたの?」 「なんでもないです」 「なんでもなくないでしょ。どしたの? こわいゆめみた? あ、めがねいる?」 いらないです、っていって、もっとなきそうなカオをした。 「おれはさ、ひよしがなきそうだとおれもなきたくなんの」 「泣きそうなかおなんてしてません……!」 お。 ちょっとだけどいつもの感じにもどってきた。 「言わないとちゅーすんぞー」 「へ、ちょ、アンタ、」 ちぅ。 よし、おれのかち。 ひざまくらってすごいなー。 「な、にすんですかアンタ!」 「ひよまっかー。かーわいー」 「あかくないしかわいくもないです!」 かおをぐいぐい近づけていったら両手で押し返される。 だから日吉のアタマはまだおれのふとももの上。 ねぼけてたから気づいてないかな。 「ね。なんでそんなへこんでたの?」 「だからへこんでないです…!」 「もっかいちゅーすんぞー」 「……」 「じゅみょう縮むよ? それか幸せがにげるらしいよ?」 「……今日、誕生日、じゃないですか」 「うん」 「おめでとうございます、って言うの」 「うん、すっげーうれしかったよ?」 「ほんとは、ちょうどがよくて」 「ちょうど?」 「今日が、誕生日って知らなくって、だから、」 言うの、12時、ちょうどが、よくって。 そう言う日吉はすげえ一生懸命で。 さっきより、もっと、ずっと、びっくりした。 「そんで、頑張って起きててくれてたの?」 口をぎゅってして、ほっぺもっと赤くして。ちょっとカオをあっちにむけて、こくん、てした。 「ひーよー。もうほんっとうれしい。マジでマジで!」 「でも時間が、」 「だいじょーぶひよがいちばん!」 「けど、メールとか、携帯」 「フロ入ってから見てねーもん」 「ほんと、ですか…?」 「おれ日吉にウソついたことないよー」 だからひよしがいちばん、っていったら、安心したみたいにわらった。 「もう日吉ちょうかわいい!」 って言ってもっかいちゅーしようとしたら殴られた。 「むぅ。誕生日なのにー」 「それとこれとは話が別ですッ!」 まぁ、いっか。 「ありがと、ひよし。だいすき」 またなんでアンタは、とかぶつぶつ言ってるけど。 きみからのおめでとうが、いちばんのプレゼント。 100hitを踏んでくださった善乃さまからの、<甘めでギャグちっくな日吉受け小説>というリクエストだったのですが…。 ダメだ…ギャグ要素が皆無だよ…! と、取り敢えず、今日中にアップ出来てよかった…! +++ 100104 加筆修正。 例の如くですっごく恥ずかしい。です。 |