外は暗くて、大きな窓ガラスには自分の顔が映る。
鮮やかな赤色も、自分の暗い青も、オレンジがかった照明の世界の中に映って色が変わっているんだろう。

「っつーか、聞けよあんな?ジローの奴今日もオレんとこ来てさ、日吉が日吉が〜って」

目の前の、2人掛けのソファの真ん中にどっかり座って2人分をひとりで陣取っている岳人は、いつも通りに話を進める。
ぽんぽんと歯切れよく進む、内容がころころ変わる話が、何となく好きだ。
昔はこういった類の会話はあまり好きではなくて。
誰が相手であろうと適当に聞き流したり、聞いているふりを通したりうまく話を終了させてすり抜けてきた。

今はそんな勿体ないこと、頼まれたってする気はさらさらない。
してやらない。

まあ、岳人だから、やろなぁ。
しみじみとそんなことを思いながら、彼のマシンガントークに耳を傾ける。

「しっかし跡部、まーた今年も派手にやったな」

話は、また変わっている。

「まあ取り敢えず体育祭も終わったしなあ。有難いありがたい」
「全っ然ありがたそうに見えねんだけど」

タイミングよく空いた窓際の4人席を占拠している俺たちのところへ、片手にお盆、逆の手に伝票を持って薄く愛想笑いを作ったバイトの女の子が近づく。
多分同い年くらいだろう。
ひとつか、ふたつくらい上。
彼女の目に、俺たちはどんな風に映っているんだろう。
なんて。
そんなことをふとした瞬間に気にしていたのは、もう随分前。

「ごゆっくりどうぞ」

目の前の赤いおかっぱの瞳は、もうテーブルの上のとろけて焦げたチーズに向けられていた。

「ごゆっくりどうぞ、なんてさ、ぜってー思ってねーよな。むしろ早く帰れ!とか思ってるぜ?絶対」
「いややなぁ、現代っ子はこれだから。お父ちゃんこんな荒んだ子に育てた覚えはありません」

わざとらしく目をつむってやれやれ、と息を吐く。

「賭ける?」
「岳人が聞いて来るんならええよ」
「パスで」
「なら企画倒れやな」
「致し方あるまい」

そうでもなさそうに、ゆっくりと端から掘り進めていく。
いつもよりゆっくり。出来るだけゆっくり。
これが暗黙の了解だったりする。

食べるよりも話す方に比重を置いて口を動かしてしばらく、残りが4分の1ほどになった頃、スプーンをくわえた岳人がメニューを開く。

「んー。チーズフォッカとガーリック、どっちがい?リッチにピザでもいいぜ?」
「岳人の好きな方で」
「選べよたまには」
「えー」
「えーじゃない。あと気色悪いからやめろそのポーズ」

先に選んだり進んだりするの、岳人の担当と違うの?

「さっさと選べよ」

嘘くさくしゅんとへこんだポーズをとった俺に、頬杖をついてスプーンを突きつけて、それはそれはかっこよく笑った。

「じゃあついでに、追加で卵も乗っけてやろうか?」

岳人相手だと気が引けるんやけど。
男前な彼に、小さく笑って呟いた。

「お言葉に甘えさせていただきます」



Happy Birthday! To Yushi Oshitari!





忍岳なのか忍足くんと岳人くんなのかわからない。
ドリアに卵のせとピザはちょうリッチ!