「うぉーいそこのピアス君」
「きゃー、タスケテ光〜」
「出たな大魔人白石」
「誰が大魔人やねん。早よ着替え財前」

予想通りというかいつも通りに、白石部長が現れた。
無駄のない、が売りの無駄に男前な部長は、笑わせることに全てを懸けている先輩たちややたらとキラキラしてる九州男や勢いに任せて飛び跳ねるチビのように、鬱陶しい程絡んでこないのは良い。
人と距離の取り方が他の部員よりも上手い。それは楽で良いと思う。

けれど。
どうしても謙也さんの視線は、一瞬俺から逸れてしまうから。

きらい。

それは部長だけじゃなくて、他の先輩や部員たちでも同じ。
先輩は、俺だけ置いて、明るい光のさすどこかに行ってしまいそうで。

「………置いて行かないで下さい」
「ん?光何か言うたか?」

ぎゅ、と腕に力を込めた。
何やくすぐったいでー、と笑う先輩はやっぱり、暖かかった。

暑いのは嫌いだ。
熱いのは嫌いだ。

でも、この人の暖かさは、なぜか心地好いと思う。
自分らしくもないけれど。

「置いて行かんといて下さいね」

先程とは違う声色で、そう告げると、案の定「何処に?」と返ってくる。

本当に鈍い。
こっちはいつもアンタを失くさないように必死だっていうのに。
そんなところも含めて可愛いだなんて、惚れた弱味だ。

「アンタがちょこまか走って行ってまうと俺が駆り出されるんスわ」
「ちょこまか言うなや。こちとらそれが売りやっちゅーねん」
「まぁ、先輩くらいすぐ追い付くんでええですけど」
「言うやないか!浪速のスピードスター舐めるんやないで!見とき、絶対捕まらんわ!」
「楽しみにしときますわ」

取り敢えず、今はまだ逃がさないように、力を込めた腕を離さなかった。



(いい加減タンクトップで抱きつくのやめぇや。セクハラやで財前)
(あ、いたんスか大魔人ラミドゥー)





財前くんがうじうじしすぎました。
精進したいです。