チャイムが鳴り終わり、それと少し間があいて、教室前方のドアが、ぱぁんっ!と勢いよく音をたてて開いた。 因みに、引き戸の正しい擬音は、ガラ、である。 「っはよー。休みいる?いないよなー?」 片手に持った黒の出席簿に目を落としながら、スタスタと、決して長くはないコンパスで早足で中央の教卓に向かう性別不明の人物ひとり。 HR時の高校生なんて、基本、自分の予備校の予習復習課題やら学校の本日提出の宿題を必死で写していたり、若しくは、今ちょうどいないのを良いことに他人の机椅子をジャックして楽しいお話タイムに精を出しているのが常である。 このクラスも例外ではなかった。 「オっマエら自分の席つけー!」 他人の席に座っていたり机に座っていたりするため、あいた席が目立つ。 欠席なのか否か非常に分かりにくい状態だ。 少しの間は、黒板の前をうろうろして声をあげていたが、すぐに痺れを切らせて両手を腰にあてた。 「よっしもう良い出席とるぞ今日は!はい、石田!」 入ってきた時と同様、はきはきとした声でサクサクと出席をとっていく。 何だかんだで生徒たちも「はーい」だの「うぃーす」だの返事をしている。 「田沼くんは痛い頭なので欠席でーす」 「おう田沼いるなー。徳永ー」 「眠いです」 あまりお目にかかれない出欠確認の後、生徒に負けない声量で連絡事項をまくしたて、またも早足で元気よく出ていった。 女子生徒と見まがう小柄な体躯に切り揃えられた赤い髪。 長袖ワイシャツの袖をボタンだけ外し、カラフルなネクタイ。 見た目の可愛らしさに反して意外と男前な2−Bの看板、向日岳人その人である。 B≫≫D ご近所のクラスへ |