「お、ジロージロー、」

近くにいる幼馴染みに宍戸が声を掛けた。

「ん〜?」
「あれ、プレイヤー、青いやつ」
「あー、オッケー」

宍戸が指差したところで、百円玉を2枚入れる。チャリンチャリン。

「うまいねぇ、ジロー」
「コイツこういいとこすげえ器用だからなー、昔っから」

滝と宍戸がガラスの向こうを覗き込む。
取りづらく出来ているはずの景品をあっさり引っかけていった。

「うい」
「おーサンキュ」
「いいなあ。ジロー、俺にも何か取ってよ」
「別にいーけど、たっきー取れんじゃん? こんなん取れねーの宍戸くらいだしー」
「うっせえよ悪かったな不器用で」

UFOキャッチャーの前で、ジローが渡したばかりのミュージックプレイヤーの箱で殴られた。

「あーずりー! ジローおれにも取れよ! 隣のうまい棒30本とか」
「今日は跡部の金だし岳人自分で取れば?」

太鼓の達人見物を終えてぞろぞろと戦争組と2年生が着いてきた。
日頃からUFOキャッチャーで欲しいものがあると慈郎に任せる。
宍戸が一般的な腕前(慈郎と岳人いわく「ド下手」)として、慈郎は超人的、向日も上手い部類ではある。
ただ慈郎程ではないため、普段は慈郎任せだ。なぜならそっちのほうが安上がりだから。
その慈郎は、またも取れないのは宍戸くらいだと言って殴られている。少し離れた日吉になぐさめてー、と抱きついて、素手で殴られた。

「岳人それ取って」
「500円」
「今日のってオール他人の金やなかったっけ?」
「気にすんな」

その後、始めは落としまくっていた割りに途中から「俺様の眼力」などと言いながら誰も欲しがってはいないぬいぐるみを乱獲した跡部を、不器用代表の日吉と宍戸で散々に罵っていた。
岳人と慈郎も調子に乗ってくまやら犬やらのぬいぐるみを投げ合っていた。


「プリクラ撮ろープリクラ!」
「日吉が眼力のポーズやるなら撮ってやってもいいぜ」
「何故俺が」

テンションかあがっての慈郎の発言に向日が謎の条件をつけた。
そんな女子みたいなの絶対いやだと突っぱねていた宍戸も、そういやオレらは昔っからやりまくってたけどアイツらがやるのは見たことねえな、とそれなりに乗り気である。

「嫌ですよ」
「えーじゃあカメラの前でちゅーでもしとけば?」
「アンタは何を言い出すんですか滝さん」
「したら眼力かキスかの二択でいこか」
「眼潰されたいんですか」

結局謎の二択を迫られ、哀れ狭いプリクラ機の中に押し込まれた日吉であった。

「こういうのって女子がいねえと入れないんじゃないのか?」
「ここイケメン限定でオッケーなんだってー」
「誰だそれ」
「まあ今日は岳人もたっきーもいるし平気っしょ」
「それもそうか。制服だけど」
「オマエら一回しね!」

全力で嫌がる日吉を面白がって押さえつけて、無理くりプリクラを撮った。
しかし、やはりと言うべきか女子がいないからか落描きは若干下手である。
日吉はぶすくれてずっと鳳を蹴飛ばしていた。
先輩たちは腹を抱えて笑っている。



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